【三芳町上富の雑木林】    2001年10月 
                            油彩画  15F 53.0×65.2cm     楽環

2001年10月14日、三芳町上富の雑木林から上富小学校方面を臨むアングルを午前九時頃から

描き始め昼過ぎまで描いた。この上富小学校の屋上は、この地域の雑木林群落を一望するのに

格好の見晴らしを提供するそうで、そこからとった写真などが照会されている。

この辺りは、所謂開発当時の新田遺構がよく残り、短冊状の敷地に屋敷林、畑、雑木林と云う

順で並び、屋敷林と雑木林が道路に面している。屋敷林には欅が多く、従って、屋敷に面した

通りには欅が立ち並び、通称「けやき通り」とよばれている。雑木林も道路に沿って連続する

群落を形成するが、最近は工場や倉庫等他用途への転用が目立ち、すでに相当の虫食い状態に

なってる。おそらくは相続が発生するたびに雑木林が手放され、工場や倉庫等へと変貌する侵食

が進行中なのであろう。他用途への転用は当然アクセスに優れた道路沿いから始まるらしく、

畑側は未だ健全な場所が残されている処が比較的多い。雑木林は人が創ったものである。だか

ら人の影響をまともに受けてしまうものなのだ。やっと始まったこの三富地区での自然再生事業

に大いに期待したい。武蔵野の雑木林は武蔵野台地のやせた畑地に施肥する有機肥料のもとと

なる落葉を供給する為の云はば農地である。ここでは理想とされる有機循環農業が300年の永き

に亘って行われているのである。

この日は昼過ぎに筆を置き、一週間後の10月20日に再び訪れ続きを描いた。10月の雑木林は静か

である。太陽の光もじっと見つめるように差込み、葉を吹き飛ばそうとする大気のせわしさも

無い。いずれ始まる枯葉の舞踏会に備えて、今はただじっと来るべき時を待っているかの如く落

ち着きはらっている。ただ林床に投じる木漏れ陽の移ろいだけが時の経つのを教えてくれる。

ラピスラズリの空に畑の乾いたやや赤い土色が映える。薩摩芋を収穫したようだ。すると野良

仕事をしていた初老のおじさんがこちらに向かって歩いてきて、私の側で暫く足を止めて見てい

たが、「どちらから来なすったか?」と尋ねる。そして「そうかね、川向うから来なすったか、

この辺のものが、荒川に釣りに行くようなもんかね。」と、この日彼が出会った風変わりな

訪問者の行動を解説し、そして納得した様子で去って行った。彼は私が荒川の向こうから来た

と云うことに驚いたのであろう。上富の絵は、この日で仕上がった。


                作品イメージ、記載内容の無断使用はお断りします。



←ホームページへ戻る