桶川市上日出谷の殿山団地沿いにある帯状の雑木林で、その向こうには家庭菜園と思われる
一段低い畑が広がり、さらにその先には県道東松山桶川線が走り、北本市との境界を為している。
2000年7月9日、13日、16日の計三回の早朝現地写生で、この雑木林から畑を見たアングルを
油彩画に仕上げた。この時期の屋外写生は蚊との戦いである。携帯用蚊取り線香を炊き、
防虫スプレーをし、長袖に長ズボンのいでたちだが、 それでも手の甲等を刺されてしまう。
首にタオルを巻くことは必須。不思議に太陽が昇ると、蚊の攻撃がやや弱まる。
梅雨季の合間の晴日を選んでの写生で、午前七時にはジリジリと暑くなってくるので引き上げたが、
今思えばこの年から始まる猛暑の序曲であった。陰影のはっきりしたまさに盛夏の雑木林である。
武蔵野の雑木林に典型的な樹木植生は、コナラやクヌギ等の落葉広葉樹であるが、この絵
に画かれた立木がまさにそう云った木々である。これらの樹木植生は、所謂武蔵野の極相林の植生
ではなく、 放置が進むと、社の杜や屋敷林に見られる常緑照葉樹林の極相林に遷移してしまうと
云われている。雑木林と畑の組み合わせが、武蔵野の地に広域的に普及したのは、畑作新田の開発
が本格化する江戸時代以降とされているが、ひょっとすると、その原形は稲作がこの地に定着
するはるか以前から、焼畑農業の進化した 形態として既にあったものなのかもしれない。
DNA分析やプラントオパール法、加速器質量分析法、年輪比定法等非常に進んだ科学的方法論
が考古学に導入され、所謂「植生考古学」的な研究領域が本格化した のはつい1990年代後半
から2000年紀にかけてからのことのようで、今後その研究成果を見るのが楽しみである。
作品イメージ、記載内容の無断使用はお断りします。次の作品へ→
←ホームページへ戻る
|